遺言書作成に関する質問②~遺言書は必要ですか?
遺言書を作成するかどうかを考え始めたとき、多くの方から最初に出るご質問があります。
それは、 「そもそも遺言書は本当に必要なのですか?」 というものです。
特に60~70代の方からは、次のようなお話をよく伺います。
「自分にはそれほど財産がないから、遺言まではいらないのではないか」
「家族仲はいいので、揉めることはないと思う」
「法律どおりに分ければ問題ないのではないか」
「エンディングノートを書いておけば十分ではないですか」 どれももっともなご意見です。
実際に、遺言書がなくても相続手続きは進めることができますし、エンディングノートを書いて家族に思いを伝えておくことも、とても大切なことです。
しかし、相続の現場に関わっていると、「遺言書を作っておけばよかった」と言われる場面は決して少なくありません。
その理由の一つが、相続人の間での認識のズレです。
ご本人は「みんなで仲良く分けてくれるだろう」と思っていても、実際にはそれぞれの立場や事情が違うため、考え方に差が出てしまうことがあります。
特に問題になりやすいのが不動産です。
預金であれば分けることができますが、自宅や土地は簡単に分けることができません。
誰が住むのか、売るのか、そのままにしておくのかといった話し合いがまとまらず、手続きが止まってしまうこともあります。
また、最近は家族の形もさまざまです。 再婚している場合や、前の結婚で生まれたお子さんがいる場合、普段あまり交流のない相続人同士で話し合いをしなければならないこともあります。
このような場合、法律どおりに分けるだけでは気持ちの整理がつかず、争いにつながることもあります。
さらに、長年介護をしてきた方がいる場合などは、「多く残してあげたい」というお気持ちがあっても、遺言書がなければその思いを反映させることができません。
ここでよく出てくるのが、 「エンディングノートを書いておけばいいのでは?」 というご質問です。
エンディングノートは、ご自身の希望や思いを家族に伝えるためのとても良い方法です。
どこにどんな財産があるか、葬儀の希望、連絡してほしい人などを書いておくことで、ご家族の負担は大きく減ります。 しかし、エンディングノートには法律上の効力がありません。
どれだけ詳しく書いてあっても、相続の分け方を決める力はなく、最終的には相続人全員で話し合いをしなければならなくなります。
その点、遺言書は法律に基づいて財産の分け方を指定できる正式な書面です。
ご本人の意思を確実に実現するためには、エンディングノートだけでなく、遺言書を作成しておくことが安心につながります。
遺言書は、財産が多い人だけのものではありません。 家族に余計な負担をかけないために、そして自分の思いをきちんと形にして残すために作るものです。 「まだ早いかな」と思われる時期こそ、ゆっくり考えることができる大切なタイミングです。 元気なうちに準備しておくことが、ご自身にもご家族にも一番安心ではないでしょうか。

