会社を継ぐ子に多くの遺産を残したい――親の想いを形にする遺言書の作り方
中小企業の経営者にとって、事業承継は人生の集大成ともいえる大切なテーマですよね。特に、会社を引き継いでくれる子どもに多くの財産を残したいと考えるのは自然なことです。
しかし、何も対策をしないまま相続が発生すると、「法定相続分」によって意図しない遺産分割がされる可能性があります。
今回は、会社を継ぐ子に多くの財産を残したいときに有効な遺言書の活用方法についてのお話です。
* 遺言書がないとどうなるの?
遺言書がない場合、相続人全員で分割協議を行い相続分を決めます。相続分は民法の「法定相続分」で分けることも多くあります。
たとえば、子が3人が相続人の場合、それぞれ1/3ずつ財産を相続するなどです。
しかし、これでは会社の株式や不動産などが分散し、事業の継続に支障が出るおそれがありますよね。
そこで、大切なのが「遺言書」です。
*遺言書があると、こんなことができます
「会社を継ぐ○○に、株や不動産を相続させる」
「ほかの子には、預貯金や保険を渡す」
「それぞれに感謝の気持ちも添えたい」(付言事項)
というように、自分の想いやバランスを大切にしながら、遺産の分け方を決めることができるのです。
*「遺留分」にはちょっとだけ注意が必要
ひとつ気をつけたいのが「遺留分(いりゅうぶん)」という制度です。
たとえ遺言書で「すべての財産を長男に相続させる」と書いても、他の相続人には「遺留分」という最低限の取り分が法律で保障されています。
具体的には、子が3人いる場合、各子には法定相続分の1/2(つまり1/6ずつ)の権利があります。
遺言書を作成する際には、この遺留分に配慮した内容にしておかないと、「遺留分侵害額請求」というトラブルに発展することもあります。
*まとめ:想いを「カタチ」にする遺言の力
「事業を継いでくれる子に報いたい」「会社をこれからも守っていってほしい」――そうした親の想いを確実に未来へつなげるためには、遺言書の作成が必要になります。
そして、生前から子供たちによく自分の願いを話しておくことで、よりスムーズな相続ができることでしょう。
大切な財産、そして会社の未来を守るためにも、早めに準備を進めることをおすすめします。